「勝利の方程式」を再現したい

2020年7月3日

プロ野球ペーパーオーナーゲーム 目次

ルール解説

 

「江夏の21球」で有名な広島カープの初優勝が1979年、この頃が日本におけるリリーフエースの黎明期でしょう。以来救援投手の重要性は年を追うごとに増していき、今やリリーフ陣の整備なくして優勝はありえない、と言っても過言でありません。

リリーフ投手というのは、ブラック企業顔負けなくらい過酷な仕事ではないかと思います。肉体的にも精神的にも相当キツい仕事です。見てるだけで胃が痛くなりそうなのに、投げている当の本人のプレッシャーは如何程のものなのでしょうか?

架空チームの編成で説明したように、プロ野球POGではシーズンを通して必要なイニング数を消化することがチームの成立条件となっています。先発、中継ぎ、抑えの区別は基本的にありません。そうなると、ゲーム上は先発型の投手ばかりを揃えてイニングを消化する方が有利となり、中継ぎ、抑えの投手を選ぶ理由がなくなってしまいます。

この状況はチーム編成を楽しむゲームとしては許容できません。辛い職場でチームを支える中継ぎ、抑え投手の労に報い、架空チームの編成の際に「勝利の方程式」を作りたくなるような仕掛けが必要です。ここでは、中継ぎ、抑え投手陣に対する追加評価について考えます。

セーブ、ホールドと勝率の関係

セーブ、ホールドが付くのは、僅差で勝利を収めたときです(ホールドは一概には言ませんが)。ということは、セーブ、ホールドが多いチームは、ピタゴラス勝率の予想よりも良い成績を残す可能性が高いのではないか?実際に確認してみました。2013~2017年NPB記録で、ピタゴラス勝率のずれを得点に換算した補正得点と、セーブ数、ホールド数との相関を調べてみました。補正得点\(ΔR\)は次式で定義します。

\(WIN\%=\frac{1}{1+(\frac{RA}{R+ΔR})^{1.68}}\)

\(ΔR=RA\dot{(\frac{WIN\%}{1-WIN\%})^{1/1.64}}-R\)

\(ΔR:補正得点\)

\(WIN\%:チームの勝率\)

\(R:チーム得点\)

\(RA:チーム失点\)

グラフを描くと以下のようになります。

セーブ数\(S\)と補正得点\(ΔR\)はソコソコ相関しており、相関係数は0.616です。セーブが付く=僅差での勝利ですから、当然の結果かもしれません。ホールドはさすがにセーブほど相関はなく相関係数は0.368でした。まあ、これも多少関係している・・・のでしょう。

セーブの多いチームほど僅差勝ちが多いためピタゴラス勝率の予想よりも良い成績を残す傾向がある、とは言えそうです。ただし、セーブが多いから僅差勝ちが多いのか?僅差勝ちが多いからセーブ数が増えるのか?どちらの因果関係にあるのかはわかりません。多分どっちもアリ、というのが本当のところでしょう。

プロ野球POGでは、投手の勝利数や、打者の打点を架空チームの成績予測に使っていません。理由は勝利数や打点は試合の経過やチームメイトの影響が大きいので、個人の能力評価指標としては適当ではないからです。セーブ、ホールドも同様で、本来は架空チームの成績予想に使うべき指標ではないと思います。

リリーフポイントRPを作る

しかし、そんな理屈よりも中継ぎ、抑え投手がゲーム上で評価されない方が(ゲームとして)大問題なので、セーブ数とホールド数を得点価値に換算し、チーム成績に反映させることを考えます。得点価値に換算したものをリリーフポイント\(RP\)と名付けます。その昔、定着せずに数年で消えてしまった同名の指標がありましたが、それとは無関係です。気にしない気にしない。

リリーフポイント\(RP\)を使ってチーム勝率の式を次式に変更します。

\(WIN\%=\frac{1}{1+{(\frac{RA}{R+RP})}^{1.64}}\)

前出の補正得点\(ΔR\)と同じ形です。そこで、セーブ数\(S\)とホールド数\(H\)を使って、重回帰分析で補正得点\(ΔR\)の予測式を作り、それをリリーフポイント\(RP\)の式として使うことを考えます。EXCELの重回帰分析を使った結果を下に示します。

重回帰分析の結果

回帰式は十分有意ですが、決定係数は0.392と低いです。またホールドの影響はちょっと怪しいようです。ともあれこれを使うとリリーフポイント\(RP\)は次式になります。

\(RP=3.178S+0.245H-132.13\)

1セーブが3.178得点に相当するとなると、35セーブ上げた投手はそれだけで110得点に相当する貢献をしたことになり、打者でいえば上位5名に位置します。これはまあ(選手年俸で見ても)そこそこ妥当な評価でしょうか?。対してホールドは1ホールドあたり0.245得点。ちょっとセーブとの格差が大きすぎる気がしますが、これもまあそんなもんかな?

回帰式としては上記になりますが、元々成績評価に組み入れるべきではないと考えているセーブ、ホールドの影響は、あまり大きくしたくはない。ゲームバランスが狂う可能性もあります。そこで、先発投手の貢献度とのバランスも考えて、影響の大きさを重回帰分析結果の2/3程度に抑えることとします。

\(RP=2S+0.15H-(平均RP/試合)\times{(試合数)}\)

\((平均RP/試合)=0.586\)

この補正を加えた場合、勝率の予測は以下のように変化します。

RP補正の効果

パラメータを増やしたので当然といえば当然ですが、リリーフポイント\(RP\)を導入した方が多少予測が改善します。リリーフポイント\(RP\)を加えた投手の総合評価のランキングは下表のようになります。

表 投手の総合評価ランキング(2018年NPB)

 選手名総合投球リリーフ
1石山 泰稚104.033.071.05
2山﨑 康晃102.327.974.45
3森 唯斗99.024.174.90
4菅野 智之98.198.10.00
5増井 浩俊95.824.571.35
6ドリス84.620.064.60
7中﨑 翔太83.518.664.90
8大瀬良 大地81.281.20.00
9内 竜也76.723.653.05
10菊池 雄星75.775.70.00
11岸 孝之68.268.20.00
12上沢 直之67.467.40.00
13東 克樹66.366.30.00
14則本 昂大64.264.20.00
15メッセンジャー64.264.20.00
16ガルシア61.561.50.00
17石川 直也59.218.540.70
18ハーマン57.920.137.80
19多和田 真三郎57.357.30.00
20山口 俊56.854.72.15

リリーフポイント\(RP\)を導入したことで、抑え投手がエース級の先発投手と同等かそれ以上の評価となりました。重回帰分析結果よりもセーブ、ホールドの得点価値を下げていますが、これ以上得点価値を上げると逆に先発投手が選ばれないことになりかねないので、抑え投手とエース級投手の評価が同程度になる今回の設定が丁度よいと思います。

という訳で、「勝利の方程式」をチーム編成の要素に加えるために、リリーフポイント\(RP\)なるものを追加してみました。(定量的な正確さは怪しい部分がありますが)リリーフ陣の活躍具合がリリーフポイントという形で見えるようになったので、ぜひ自分だけの「勝利の方程式」を作って楽しんでみてください。

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