スギナ駆除大作戦!~草むしりの数理

2022年6月4日

スギナの駆除は大変、だが不可能ではない

スギナをご存じでしょうか?名前は知らなくても見たことがある人は多いはず。春の風物詩、ツクシの本体のことです。駆除が難しい雑草としても有名で、厄介なことこの上ない。抜いても抜いても生えてくる、直ぐ増える、根っこが深くて掘っても掘っても取り切れない・・・スギナの草むしりは賽の河原シーシュポスの岩に譬えられるくらいの「苦行」に感じられます。

人力での駆除を諦め、ラウンドアップに頼る人も多いと思います。しかし、草むしりだけでスギナを駆除することは可能です。今回、数学モデルでスギナ駆除について考察しました。

スギナの増殖を数式化(ロジスティック方程式)

人口や生物の増え方を表す数理モデルとして有名なものにロジスティック方程式というものがあります。ロジスティック方程式は次のような式です。

\(\frac{dN}{dt}=rN(1-\frac{N}{N_\infty})\)

\(N:\)スギナの数

\(N_\infty:\)スギナが増殖できる最大数

\(r:\)スギナの内的自然増加率(単位時間で増殖する割合)

このロジスティック方程式を使って、スギナの増殖の様子をグラフにすると次の図のようになります。

図1では内的自然増加率\(r=0.2[-/月]\)(何も制約がなければ1ヵ月で2割増加)とし、スギナが最大に増えた状態(スギナの数=\(N_\infty\))をスギナ繁栄度=1、スギナが無い状態をスギナ繫栄度=0としています。草むしりをしないとスギナ繁栄度0.1の状態から約3年でほぼ最大まで増殖します。年に1回草むしりをし、生えているスギナの80%を取り除いたとしても、毎年スギナ繁栄度0.5くらいまでは回復し、スギナは一向に減りません。スギナが駆除できない「苦行」の状態が、数式でも再現できていますね

※ここでの計算はあくまでロジスティック方程式で内的自然増加率\(r=0.2[-/月]\)としたモデルの話であり、実際のスギナの増殖がこのようになる訳ではありません。ここでの話は定性的なものとして受け取ってください。

草むしりは頻度が重要

「スギナ駆除」というというと「どれだけ取り除くか」を気にしがちですが、実はそれ以上に「頻度」「間隔」が重要です。次の図は草むしり間隔1年/半年/3ヵ月のときのスギナの変化です。

同じ除去率50%でも草むしりの間隔でスギナ繁栄度は変わります。そして注目は草むしり間隔3ヵ月の結果です。草むしり間隔1年/6ヵ月ではスギナ繁栄度は最終的にある一定レベルで安定しますが、草むしり間隔3ヵ月ではスギナ繁栄度は0に漸近する=スギナを撲滅できているのです

※くどいですがここでの計算はあくまでモデルの話であり、3ヵ月に1回草むしりすればぜったい撲滅できるという訳ではありません。

草むしり間隔とスギナ繫栄度の関係をグラフにしてみると次の図になります。

除去率50%でも草むしり間隔が3ヵ月以下ならスギナ繁栄度は最終的に0になるし、逆に頑張って草むしりして除去率90%達成しても1年に1回しか草むしりしなければスギナはいつまでも残ります。

草むしり間隔とスギナ繁栄度0を達成できる除去率の関係は次の図になります。

グラフの線より左上の草むしり間隔と除去率なら最終的にスギナを撲滅できます。スギナは地下茎だけでも生えてきますから、草むしりで除去率90%なんてのはまず達成不可能。でも地面の上に出ている分を除去するだけなら可能です。草むしりで取れるスギナが50%(地表に出ている分だけ)だとしても、草むしりの間隔を3ヵ月以下にすればいずれはスギナは撲滅できる、のです

※大事なことなので何度も言いますがあくまで数学モデル上の話であって、実際のスギナは3ヵ月に1回程度ではダメかもしれません。ただ間隔を短くすることが大事なことは間違いないと思います。

実際のスギナ撲滅プラン

これまでの理論に基づいて実際にスギナを撲滅しようとするとどのようなプランが良いのか?実体験を元にすると以下のようになります。

1.とにかく高頻度で草むしり(1年目~3年目)

前出のグラフからわかるように、初めのうちはとにかく高頻度(短い間隔)で草むしりすることが重要です。別に地下茎まで引っこ抜く必要はありません。目に見える地表部分のスギナだけを徹底的に取る。あまり良い喩えではありませんが、人を殺すのに頭を打ち抜くか?心臓を打ち抜くか?両方打ち抜く必要はありません。スギナも地表に出た緑の部分だけを取ればよいのです。地下茎だけではスギナは(生き残るけど)増えません。いずれは死滅します。

毎週のように、とにかく気づいたときに、目に見えるスギナを抜く。だいたいこの期間が2年から3年です。初めの1年間は結構な労力ですが、3年もすればスギナの量は明らかに減ってきて、かなり負担も下がります。

2.確実に全部抜く(3年目~5年目)

初めのころに比べると圧倒的にスギナの量は減っているはず、しかし油断してはなりません。ヤツらは一度調子に乗るとイッキに復活してきます。量が減った状況ではやたら頻度を高くしてもそもそも取れるスギナが多くありません、3年目以降は除去率を上げる方が作業効率が良いです。春~夏に数回、庭じゅうくまなく探索して確実に全部抜草します。スギナを抜くとき根元付近を持って「じわっ」と引っ張ると、根っこの途中まで抜けます。スギナの地下茎は横に伸びる部分と地表に向かって縦に伸びる部分があるのですが、その縦に伸びる部分の根なら比較的簡単に抜けるのです(多少コツがいりますが)。地表スレスレのところで茎が切れた状態だと直ぐに次が生えてくるので、可能な範囲で根っこ部分も取ると良いです。

3.気を抜かないで、気づいたら仕留める(5年目~)

ここまでくれば生えてくるスギナは殆どありません。しかし重要なのは水際作戦、初めの数本が後の大量発生につながる惧れがあるのです。ときどきパトロールし、スギナを見つけたら確実に除去しましょう。とはいえ年間数本抜くだけでO.K.、大した手間はかからない状況になっていると思われます。

スギナ駆除に「終わり」はある!

スギナはいつまで経ってもなくならない、スギナ除草は終わりのない苦行のように思っている人も多いと思いますが、正しく草むしりの頻度を考えれば、いずれはスギナは駆除できます、できるのです。希望を捨てずに草むしりしましょう。とはいえ草むしりだけで除去するのは結構な労力なので、やっぱりラウンドアップに頼っちゃうのかもだけどね。