【プロ野球POG】チームセーブ数の上限は?
誰も頼んじゃいないのに本ウェブサイトで紹介し続けているプロ野球POG、2023年は秩父ジャイアンツが勝ち星以上のセーブ数を上げ、リーグ首位を独走しています。現実にはありえない話ですが、ドラフト会議で抑え投手を沢山獲得するとこうなってしまうのは避けられません。プロ野球POGでは、所属選手が記録したセーブを得点価値に換算して勝率計算を補正していますが、補正の際にセーブ数の制限を設けた方が良さそうです。
しかし、実際のところセーブ数の上限はいくつなのでしょうか?セーブは点差が3点以内でないと記録されませんが、チームのセーブ機会は何試合くらいあるのでしょう?今回チームセーブ数の上限について計算してみました。
得失点差の分布を調べる
2022年全試合の、ホームチームから見た得失点差分布は次のようになります。
単純な釣り鐘型分布かと思いきや、かなりいびつな分布です。引き分け(得失点差0)のケースは少なく、ホームチーム側が1点差で勝つ試合が一番多くなっています。これは引き分けの場合は12回まで延長戦があること、ホームチームはサヨナラ勝ちがあることが要因です。
ちなみに2021年は延長戦はなし(9回引き分け)でした。この場合は下図のような分布になります。
こうなると引き分けがぐっと増えるのですが、サヨナラ勝ちがあるので相変わらずホームチームが1点差で勝つ試合が引き分けよりも多くなります。
試合数を3点差以内、4点差以上で整理すると、次の表のようになります。
2022年 | 4点差以上 | 3点差以内 | 同点 | 合計 |
勝利 | 146 (17%) |
293 (34%) |
– | 439 (51%) |
敗北 | 151 (18%) |
252 (29%) |
– | 403 (47%) |
引分 | – | – | 16 (2%) |
16 (0%) |
合計 | 297 (35%) |
545 (64%) |
16 (2%) |
858 (100%) |
2021年 | 4点差以上 | 3点差以内 | 同点 | 合計 |
勝利 | 133 (16%) |
249 (29%) |
– | 382 (45%) |
敗北 | 153 (18%) |
221 (26%) |
– | 374 (44%) |
引分 | – | – | 102 (12%) |
102 (12%) |
合計 | 286 (33%) |
470 (55%) |
102 (12%) |
858 (100%) |
セーブ機会の発生確率を負の二項分布モデルで求めると
以前、1試合あたりの得点分布は負の二項分布で近似できそうだということを紹介しましたが、負の二項分布近似を使って得失点差の計算すると次のようになります。
負の二項分布近似 | 4点差以上 | 3点差以内 | 同点 | 合計 |
勝利 | 18% | 26% | – | 44% |
敗北 | 18% | 26% | – | 44% |
引分 | – | – | 11% | 11% |
合計 | 37% | 52% | 11% | 100% |
ちなみに負の二項分布の母数r=3.525、p=0.538、平均4.11、分散8.92です。
二項分布近似での計算結果は延長戦&サヨナラ勝ちのない2021年のアウェーチーム勝利(=ホームチーム敗北)のときの結果とほぼ同じとなります。現実はもっと複雑ですが、理想的な状態(延長なし、サヨナラゲームなし)ではセーブ機会の計算にも負の二項分布近似が使えそうです。この場合、アウェーチームにセーブ機会があるのは全体で平均26%、アウェーチーム勝利のうち59%でセーブ機会があります。
ホームチーム勝利の場合はどうでしょうか?ホームチームにセーブ機会があるのは(例外もありますが、大抵は)8回までに3点差で勝利しているときです。負の二項分布近似は9回までの得点分布ですが、負の二項分布は再生性をもつので、(各イニングの得点確率が同じだとすれば)8回までの得点分布も予想できます(母数rを8/9すればよい)。それを使えば8回までに3点差で勝利している確率を求めることができます。
負の二項分布近似 (8回まで) |
4点差以上 | 3点差以内 | 同点 | 合計 |
勝利 | 17% | 27% | – | 44% |
敗北 | 17% | 27% | – | 44% |
引分 | – | – | 12% | 12% |
合計 | 33% | 55% | 12% | 100% |
という訳で、(9回引き分けルールの場合)ホームチームにセーブ機会が発生する確率は平均で27%、ホームチーム勝利の62%でセーブ機会があります。ホーム、アウェーの平均を取ると、勝利のうちの約60%でセーブ機会があることになります。
実際セーブはどれくらい付いている?
2013年~2022年の公式戦記録から、勝利数に対するセーブ数の割合を求めると下図のようになります。
全体としては勝利数の約半分でセーブが記録されていました。セーブ機会が60%でセーブ数が50%・・・差分が最終回逆転勝利と完投勝利と考えると、まあそんなもんかな、という感じですね。勝利数とセーブ数は比例関係にありますが、勝利数とセーブ数/勝利数には相関がみられません。勝利数の60%以上でセーブが記録されている例も13(11%)ありました。投手力はあるが得点力が弱くて勝つときはいつも僅差・・・のようなチーム事情があるとセーブ機会が増えるのでしょう。と、個々のチーム事情を考えると多少ブレますが、実際のセーブ機会発生確率も負の二項分布での予想どおり勝利数の60%程度、最大でも65%と考えて良さそうです、ざっくりですが。
プロ野球POGにセーブ数制限を加えます
これだかグダグダ書いてきましたが、結論としてプロ野球POGではセーブ機会は全勝ち星の70%で発生する(非現実的でないセーブ数の限界はこの辺かな、ってことで)、と仮定し以下のようにルールを変更します。
- セーブ数の上限を(補正前の勝率)×(試合数)×0.7とする。
- 上限を超えた場合、ホールドとして扱う
ま、ほとんどの場合でセーブ数の上限にあたることはないんだけどね。今期の秩父ジャイアンツはかなりのレアケース。
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