投手のBABIPと打者のBABIP

プロ野球の開幕は少なくとも6月以降だそうで。折角準備してきたプロ野球ペーパーオーナーゲームも開店休業状態です。しょうがないので、過去のプロ野球データを見て遊びます。

「打たせて取る」は幻想か?

セイバーメトリクスの出した有名な成果の一つが、グラウンド内に飛んだ打球(本塁打以外の打球)が安打になるかどうかは投手の能力と関係ない、というものです。グランド内に飛んだ打球がヒットになる確率をBABIP(Batting Average on Balls In Play)といいます。BABIPは次式で計算されます。

\(BABIP=\frac{安打数-本塁打数}{打数-本塁打-三振+犠飛}\)

BABIPは同じ投手でも年毎のばらつきが大きく、一貫した傾向はみられません。BABIPはほぼランダムに決まっており、投手のタイプや能力とは無関係に見える、とセイバーメトリクスは主張します。「打たせて取る」ピッチング技術は幻想だというのです。ああ、またしてもセイバーメトリクスによって野球のロマンが打ち砕かれていく(打順の話もそうでした)。

BABIPは何で決まる?

BABIPは何で決まっているか?投手、野手、そして対戦する打者の3者の技術、能力が関係していると考えるのが自然です。BABIPが投手の能力によらないというのは、正確には打者や野手と比べて投手の能力の影響は無視できる位小さい、ということなのでしょうか。

そこで打者、投手、チーム守備のBABIPを比較してみました。
(1)打者:2019年打席数上位50名の通算BABIPB
(2)投手:2019年投球回数上位50名の通算BABIPP
(3)野手:2019年12球団の守備BABIPT

各指標は次式で計算しました(犠打の扱いなどが同じではありませんがおおむね同じ定義です)。

\(BABIP_B=\frac{安打数-本塁打数}{打数-本塁打-三振+犠飛}\)

\(BABIP_P=\frac{安打数-本塁打数}{打者-被本塁打-奪三振-四球-死球}\)

\(BABIP_T=\frac{安打数-本塁打数}{打者-被本塁打-奪三振-四球-死球}\)

グラフで表すと下図のようになります。丸の面積はインプレー打球数(上式の分母)を表しています。

2019年NPB公式記録より

BABIPは打者による違いは大きく、投手とチーム守備による違いは相対的に小さいことがわかります。BABIPは打者の影響が一番大きい、と言えそうです。

レギュラーと控えの差

打者を次のように年間打席数別にランク分けし、各ランクのBABIPを計算してみます。

表 年間打席数別BABIP(2014~2019年)
  年間打席数 インプレー打球数 比率 BABIP
1 600~ 42188 16% .3227
2 400~599 101644 38% .3074
3 200~399 63930 24% .2977
4 0~199 57293 22% .2674
  ALL 265055 100% .2989

年間600打席以上の選手(不動のレギュラークラス)は明らかにBABIPが高いです。田口壮は、わざと詰まらせてポテンヒットを打ち(※1)、内川聖一はボールにトップスピンを掛けて内野の間を抜くヒットを打つといいます(※2)。打者はBABIPを上げるために様々な技術を駆使しており、その技術力の差がレギュラークラスと控えの差となっているのでしょう。バッティング技術とは、物凄く奥深いものなんですねぇ。

同じ評価を投手に対しても行ってみます。投手を次のようにイニング数別にランク分けし、各ランクのBABIPを計算してみます。投手の場合は先発、リリーフと分業化されているので、ここでは年間イニング数/試合数が3以上の投手(リリーフ以外の投手)について集計しました。

表 年間イニング数別BABIP(2014~2019年)
※イニング数/試合数が3以上の投手を対象として計算
  年間イニング数 インプレー打球数 比率 BABIP
1 150~ 54273 31% .2839
2 100~149 62184 35% .2894
3 50~99 40903 23% .2918
4 ~49 18491 11% .3035
  ALL 175851 100% .2897

打者ほど差は大きくありませんが、年間150イニング以上投げるエース級先発投手はBABIPが低い、ように見えます。打者ほど明らかではないにせよ、やはり投手にもBABIPを下げる技術があるのでしょう。

年間600打席以上の一流打者の打席は全体の16%、技術的に未熟な打者が多い年間200打席以下の打者の打席は全体の22%でした。運悪く一流打者ばかり相手にした投手はBABIPが高くなり、巡り合わせよく未熟な打者相手に投げることが多かった投手はBABIPが下がることになります。投手のBABIPが能力に無関係に見えるというのは、「打者の巡り合わせ」という名の運の要素が大きい、という意味だと思われます。

プロ野球POGでの投手成績評価

プロ野球ペーパーオーナーゲームでは、投手の成績評価に安打数を加えています。(打者の巡り合わせと言う)運不運の要素が大きく影響する評価方法といえます。しかし今回の調査から安打数が全くの運ではなく投手の能力も(多少は)影響しているらしいと思われ、ゲームでの評価方法はやっぱりこれでいいのだと思った次第。ゲームの性格上そのシーズンの運不運の要素を入れる方が面白いですしね。